彩乃---失恋から学ぶべき教訓って、たくさんあると思うけど、実はそれって、失恋から立ち直るための方便なのかもね。
恋に破れてただ落ち込んでるだけじゃ、あまりに自分がみじめだもん。つらい失恋の痛手から立ち直るためには、何かを学んだつもりにでもならなきゃ、やってられないっていうのが、実際のところかも。
さくら---確かに、そういうところありますよね。失恋した後って、自分を見つめ直すために、ひとりで過ごすことが多いですよね。
そういう時に改めて恋を振り返って、反省したりすることが多いですから。それが失恋から学ぶ教訓ということですよね。
真央---へえ~、そういうもんですかねー。わたしなんて寂しさを紛らわせたり、新しい出会いを見つけるために、速攻で飲み会とか開いちゃいますけどねー。
彩乃---まあ、真央は過去の失恋から何も学んでないから、そんな感じなのかもね。でも、さくらの言うように、失恋の時ぐらい自分のことを見つめ直さなきゃ、ほかにそんな機会あまりないもんね。
さくら---そうですよ。ただ失恋を繰り返しているだけじゃ不毛ですもん。
真央---彩乃さんもさくらさんも失恋から何かしらの教訓を学ぶべきだ、みたいな立派なこと言いますけど、じゃあ実際にそういう教訓は、次の恋愛にホントに生かされるんですか?
彩乃---う~ん、それを言われるとちょっとねえ。失恋した時には反省するんだけど、別の人を好きになったりすると……。
さくら---すっかり舞い上がっちゃって、同じ失敗を繰り返してしまうんですよねえ(ため息)。
真央---でしょー。だから、教訓とか反省なんて後ろ向きなこと言ってないで、新しい出会いを探した方が結局、前向きなんですって。
彩乃---そうかなあ。真央の言う前向きって、何の根拠もないからねえ。前向きっていうよりも、前につんのめってる感じ。
真央---でも、そんな深刻ぶったってしょうがないじゃないですか。イヤなことはとっとと忘れる。失恋を忘れるには、それが一番なんですって。
さくら---でも、普通の女性は真央ちゃんのようには割り切れないわよ。確かに失恋自体はつらい経験かもしれないけど、付き合っていた時のことは、いい思い出なわけでしょ?それをイヤなことだなんて、スッパリ切り捨てられないわよ。
彩乃---ともかく、確かに真央の言うとおり、失恋から教訓を学んでも次の恋愛に生かされるかといえば、必ずしも、そういうわけじゃない。むしろ、同じ失敗を繰り返すことの方が多いかもね。でもさ、 <失恋→ひとりになって自分を見つめ直す→失恋から教訓を学ぶ>という一連の流れは、きっと、前の恋から新たな恋へ移行する時に、絶対必要なプロセスなんだと思うよ。
さくら---私もそう思います。きっと前の恋から教訓を学んだと思えた時点で、初めてその恋に終止符を打つことができて、新たな恋に進めるんじゃないかしら。
彩乃---おー、さすがはさくら、いいこと言うねえ。失恋から教訓を学ぶということは、前の恋の幕を降ろすということなのよ。
真央---だから、失恋の教訓を次の恋に生かせなくても、別に問題ないじゃないか、と?
彩乃---そうそう。
真央---そういうものですかねー。教訓が前の恋のケジメですか……私的には前の恋のケジメっていうのは、新しい人と付き合うことだと思うんですけどねー。
前の恋から、新しい恋に移行するのに、そんな心理的な手続きは、私は全然必要ないですけどね。「覆水盆に返らず」じゃないけど、終わった恋はもう一度やり直せるわけじゃないんだから、あれこれ考えても仕方ないと思うけどな。
彩乃---おー、そんなことわざとか言えちゃうんだ。
真央---ほっといてくださいよ。そのくらいのことは知ってるんですっ!
彩乃---まあ、それはともかく、真央の言うように、終わった恋をあれこれ考えても仕方がないけど、ひとつの恋が終わってすぐ次に、ってわけにはいかないよ。女心って、そういうものでしょ。
だから、失恋から学ぶ教訓というのは、次の恋に生かすっていうよりも、失恋から立ち直るための「処方箋」みたいなものなんじゃないかな。