中村さん(30歳・仮名)はいざ告白するとなると土壇場で不安がよぎり、結局は告白できないという、どうしようもないヘタレ男。こんなことでは、永久に意中の女性をゲットできないだろう。そんな中村さんのヘタレぶりは、まだまだ続く。
「僕って本人には告白できないんですけど、周りの友人や好きな女性の友人には好きだって吹聴するんですよね。我ながら姑息だと思うんですが、そうやって遠まわしに自分の思いが彼女に伝わればいいかなって」
いやあ、それはたぶん逆効果。そういう姑息な手は女性がもっとも嫌うもの。 それはやめたほうがいいかと……。でも、なぜ、そこまでして意中の女性に思いを伝えようとするのに、本人に直接告白することができないのだろうか?
「たぶん、彼女に自分のことを拒絶されることが異常に怖いんでしょうね」
いやー、その気持ちはわからないでもないけど、そこまでいっちゃうと病的な感じがするんだけど。拒絶されたらされたで、二度と会わないようにするとか、失恋の傷を癒すような方法はいくらでもあると思うのだが……。
「いやいや、そういうことは全く考えないですね。好きな女性に振られても自分としてはまだ好きなわけですから、二度と会えないなんて嫌ですもん」
えーっ、でも一回すでに振られているわけだから、もうチャンスの芽はないでしょうに。
それとも、諦めずに再チャレンジするとか?
「そんな甲斐性が僕にあるわけないじゃないですか(苦笑)。でも、いったん振られたら、まあ余程のことがない限り、二度と会わないということはないにしても、二人で一緒に食事に行ったりとか、そういうことはなくなっちゃいますよね。それが一番怖いんですよ」
まあ、もう脈がないんだから、今さら一緒に食事に出かけたりしてもしょうがないと思うのだが……。
「そんなことないですよ。告白せずに、二人の関係をハッキリさせないで曖昧なままにしておけば、彼女とつかず離れずで、ずっとそばにいられるじゃないですか。好きな女性にうっかり告白なんてして気まずくなるより、僕にとってはそっちのほうが全然いいんです」
でも、そんな膠着状態を女性がそのままにしておくわけがない。
中村さんと何の進展がないままなら、彼女は新たな男性を見つけ交際を始めるに決まっている。
「そう、それで僕の失恋は決定するんです。そこで初めて、彼女への思いを断ち切ろうと、あれこれ努力するんですけどね」
いやいや、失恋って中村さんは何もしてないじゃん!
ただ、彼女の周りを人工衛星のようにグルグル回っているだけで、直接的な行動は何もしていない。普通、そういうのは失恋とは言いません。
「そうなんですよねえ。彼女に好かれないまでも嫌われたくない、という気持ちが強すぎるんでしょうね。我ながら女々しいな、と思いますけど」
きっと相手の女性をあまりに好きになってしまったために、こうした状況に陥ってしまうのだろう。 よく言えば一途だし純情。でも、そういう中村さんのいい面を理解してくれる女性は、そうそういないだろう。 彼の孤独はまだまだ続きそうである。