彩乃---わが社の草食系男子・T男(23歳)の恋愛観を聞いてきたわけだけど、恋愛に対して、けっこう淡白な印象。
不況という時代を反映しているといえば、それまでだよね。だけど、こんなご時世だからこそ、もうちょっと貪欲にというか、覇気がほしい気もするし。
真央---ホントですよね~。で、T男はデートのとき、どこ行くの?
T男---別にどこにも行かないねー。だいたい、どちらかの自宅で過ごすことが多いよ。
真央---え~、全然出かけたりしないの?ディズニーランドとか行ったりするものでしょ。
T男---いやー、出かけちゃうとお金かかっちゃうし、別に2人でいれば、どこにいても楽しいよ。
さくら---それはそうなんだけど……。でも、なんかこう、イベント的なものが時々あったほうが、盛り上がるんじゃないですか?
T男---んー、そうですかねえ。そういう盛り上がりは、僕は、あんまり求めていないんで。流行りのスポットに行ったりするのって、無理してるっていうか、背伸びしてる感があって、あんまり好きじゃないんですよ。
彩乃---まあ、必要以上に背伸びしないという考え方はいいと思うけど、ちょっとテンション低すぎない?恋愛って、もっと盛り上がるものでしょ。少しは彼女のために、無理してみてもいいんじゃないの?
真央---そうだよ~。そういう付き合いばかりだったら、あんまり恋愛してる感じがしなくなると思うんだけど。
さくら---確かに。あんまり必然性がないような……。
T男---必然性というか、恋愛と同じくらい大事な人間関係だってありますからね。
真央---恋愛に勝る人間関係なんて、あたしはないと思うけどな~。
T男---そんなことないよー。友だち関係とか、親との関係もあるじゃん。
真央---え~、彼女よりも親が大事なわけー?
T男---どっちがというわけじゃないけど、母親のことは大好きだよ。よく母親と2人で出かけたりするし、誕生日や母の日には必ずプレゼントしてるしね。
彩乃---でも将来、結婚して奥さんと母親がモメたりしたら、どっちの味方するのかね?
T男---奥さんも母親も自分の家族じゃないですか。どっちがとかないですよ。ていうか、モメたりしないし。
さくら---まあ、嫁と姑の争いみたいな話はともかく、私、T男さんの話を聞いていて思ったんですけど、T男さんって、家族とか恋人とか親友とか、人間関係が内へ内へと向かっているような、感じがするんですよ。人間関係を外に広げていこう、という動きが見えないんですよね。
T男---あー、確かにそういうところありますね。あまり知らない人は信用できないというか、自分に危害を加えるんじゃないか、みたいに思ってしまうところはありますよ。
真央---危害を加えるって?
T男---例えば会社ですよね。こういうご時世だとリストラに遭ったり、同僚はライバルだったりするわけでしょ。世知辛い世の中だと、自分の身近な人たち以外はいつ敵になってもおかしくないなんて状況だってあると思うんだよね。でも、僕は他人と争うのは嫌いだし……。
さくら---だから、自分の身近な人との人間関係を、ことさら大事にしたくなるわけですね。要は、厳しい社会から自分を守るため、みたいな……。
T男---そうなんですよ。結局信じられるのは、というか、心が休まるのは家族や恋人、親友の前だけ。だから、そういう人間関係は何にも代えがたいですよね。
彩乃---しかし、そういう大変な現代を生き抜いてこそ「男」って感じもするね。まあ、そうならないところが「草食系」たるゆえんなんだろうけど。
ギスギスしたところに、真っ向からぶつかるんじゃなくて、なんとなく、やり過ごしちゃうというのも、不況の世の中を生きる知恵なのかもしれないね。