是故始如處女、敵人開戸、後如脱兎、敵不及拒
「始めは処女のごとくにして、敵人、戸を開き、後は脱兎(だっと)のごとくにして、敵、拒ぐ(ふせぐ)におよばず」
とは、2500年前に生きた古代中国の軍事思想家である孫子の言葉です。
最初は未婚の女性のようにおとなしく自信なさげにふるまい、敵が油断して扉を開いたら、一目散に逃げるウサギの速さでに素早く攻めいれば、敵は攻撃をふせぐことができない、という意味になります。
古代中国で500年続いた戦乱の春秋戦国時代に『孫子』の兵法は考え出されました。
『孫子』は、最古にして最強の兵法書として、古代中国だけでなく、現在も世界中で研究されています。
日本の戦国時代には武田信玄が『孫子』から引用した「風林火山」を旗印に定めていますし、ヨーロッパではナポレオンが愛読書にしていたとか。
近代アメリカでは国防総省がその軍略を分析していたといわれています。
また、ビジネスや恋愛にも応用できると大変人気なんですよ。
実際の恋愛シーンでは、気になる異性が現れて、告白するのか、させるのか、という駆け引きが始まると、男女問わず、軽く見られまいと思わず身構えてしまいがちですよね。
でも、お互いが固くなっていては、なかなか恋愛ムードには発展しません。
そこで孫子の兵法にならい、最初は無防備にあえて力を抜き、何も知らない少女のようにふるまうのです。
片方が緊張を解けば、もう片方も自然と力が抜けてガードをゆるめてきます。
その瞬間を逃さず、すばやく懐に飛び込むのです!
聞きにくい質問でも、デートの約束でも、思い切って告白でもかまいません。
ガードを解いた相手の心には、きっとあなたの想いがストレートに刺さるはずですよ!
今週の恋愛格言をのこしたのは、古代中国の軍事思想家・孫武(そんぶ)です。
今から2500年前、中国東部の斉の国に生まれ、血で血を洗う戦乱が500年も続いた春秋戦国時代に、兵法家として、また武将としても活躍しました。
孫子、という呼び名は孔子や孟子と同じく尊称です。
若いころから兵書に学び、弱冠20歳前後にして13篇の兵法の書『孫子』を書いています。
後に時の呉王に認められ将軍に就任すると、みずからの兵法を存分に発揮して、大国であった楚の大軍20万をたった3万の兵で撃破するなど、連戦連勝の大活躍で中華全土にその名を轟かせました。
「戦わずして勝つ」ことを最上の軍略であると位置づける“孫子の兵法”には、
善く兵を用いる者は、その鋭気を避けてその惰帰(だき)を撃つ
(兵の使い方がうまい者は、相手の士気が高い時は避け、衰えている時に攻撃する)
善く戦う者は、人を致して人に致されず
(戦いのうまい者は、自分が主導権をにぎって相手をほんろうし、相手にほんろうされることはない)
など、現代でも軍事のみならず、スポーツやビジネス、さらに恋愛においても応用できる戦法がたくさんあります。