中村さん(30歳・仮名)は、近年まれに見る奥手な男。
自分から女性を誘ったり、告白したりすることが上手くできない。
彼の恋愛のパターンは大体がこんな感じ……。
「いいなと思う女性と知り合って、勇気を振り絞って食事とか誘うわけですよ。そういうのを繰り返していくじゃないですか。まあ、そのときに告白できたりすればいいんですけど、なかなかタイミングが掴めないんですよねえ。そうこうしてるうちに好きだという気持ちだけが膨らんでいって、彼女の前に出ると緊張しちゃって、彼女への態度がどんどん不自然になって不審に思われちゃうんですよ。そして、こりゃマズイと思って意を決して告白すると、気持ち悪がられてフラれるというパターンですね」
絵に描いたような悪循環。これじゃ永久に女性と付き合えない感じだが、そういうわけでもないらしい。この男、奥手で優柔不断ではあるものの、それはあくまで恋愛に関してだけで、トークは面白いし、オシャレでルックスだって悪くないのでモテることはモテるのだ。
従って、これまで彼が付き合ってきたのは、ほとんどが自分から彼に告白してきた積極的な女性ばかりだという。
「せっかく自分のことを好いてくれてるわけだし、それに僕の場合、なかなか自分からは積極的に行けない性格だから、そういう告白してくれた女性と付き合うわけですけど、自分がそれほど好きじゃないわけですから、まあ上手くいかないですよね。付き合っているうちにだんだん好きになってくるだろう、とか思ったりもしたのですが、やっぱりそういうことはなかったですね。結果的に、付き合っている女性を傷つけることになってしまって、本当に反省しています」
繰り返すが、本当に悪循環である。しかし、告白できないといっても、食事に何度も誘ったりしているのだから、そのときにでも告白しようという気持ちにならないのか?
「もちろん、そりゃいつも思っていましたよ。どうしても、いざというときになると自信がなくなってダメなんですよねえ」
しかし、食事に誘えば応じてくれるのだから、相手の女性も決して中村さんに対して嫌な感情は持っていないはず。 もう少し自信を持ってもいいのでは? というか、こういうことは無理矢理にでも自信を持たなきゃやってられない、という気もするが……。
「いやいや、だって大人なんですから、僕のことを好きじゃなくてもそれをあからさまに表には出さないでしょう。食事なんてちょっと我慢して付き合えば済むわけですから、社交辞令みたいなもんじゃないですか」
そんなことないって。 よっぽど高級で美味しいものでも食べさせてくれない限り、女性は嫌いな男と食事なんてそうそう行かないって。それこそ大人だから角が立たないよう、仕事や先約があるとか上手いこと口実をつけて断っちゃうもの。
中村さんの場合は誘えば女性がついて来るわけだから、少なくとも嫌われたりとかネガティブな感情は持たれていないはず。もっと自信を持ってみては?
「そうですかねえ。僕みたいな臆病な男は、食事中も女性の一挙手一投足を観察しているわけですよ。ちょっとした会話や仕草から、自分に対する感情を判断するわけです。そうやって判断していくと、結論はやっぱり自分に好意をもっていないのでは、ということになるんですよね。なもんで、食事に誘うときには『今日こそは絶対告白してやる』とか意気込んではみるのですが、結局は何も言えずにそのまま帰宅するという感じなんですねえ」
う~ん、何だか考えすぎて1人で勝手に空回りしているような気がしないでもないけど……。
自分から女性を誘ったり、告白したりすることが超苦手な中村さん(30歳・仮名)。
それでも、意中の女性と運よく食事やデートができたときは、何とか勇気を振り絞って告白を試みようとするらしいのだが……。
「もちろん、デートの前は『今日こそは何としてでも告白してやるぞ!』と、やる気満々なんですけどね(笑)。ただ、彼女と一緒に過ごすうちに、こりゃ自分には気がないぞ、と彼女の言動から気がつくわけですよ。で結局、告白できないまま終わっちゃうパターンで……」
う~ん、彼女の言動とか気にしすぎだと思うんだけど。
せっかく、思いを寄せている女性と一緒に過ごせるのだから、まずはそれを楽しむことに専念して、そしてお互い盛り上がった勢いで告白すればいいと思うのだが……。
「いやー、緊張しちゃって楽しむどころじゃないんですよねえ。まず、彼女に嫌われないように振る舞うのに気を遣っちゃうし、それと告白するタイミングをずっと窺っているわけですから、そのことばかり頭にあって、正直せっかくのデートなのに心あらずって感じになっちゃうんですよね。ホント、我ながら情けないです」
しかし、彼女の目からすると、デート中の中村さんというのは、かなり挙動不審に見えるに違いない。せっかくデートに応じてくれたのに、これじゃ好感度が下がる一方なのでは?
「だと思いますよ。しかも、こっちが告白しようとして緊張しているのもバレバレでしょうからね。しかも結局、何も告白しないわけですから、気持ち悪いでしょうね。いや、むしろ何も告白されなくてホッとしているか……」
もう、何でもいいから告白すればいいのに。引っ張れば引っ張るほど、事態はどんどん悪化していく一方だ。つい、先日もこんなことがあったそうだ。
「今、思いを寄せている彼女がいるのですが、その彼女とレストランで食事をしたんですよ。当然、この日も告白する気満々だったんですけどね(苦笑)。で、食事中の会話も盛り上がって彼女も楽しそうだったし、今度こそイケそうだと思ったんですよ。なのですが……」
いやいや、なぜそこで「なのですが」ってなっちゃうの!?
盛り上がった勢いで、そのまま「大好きだ」って言っちゃいなさいよ~。
「いやー、そう思ったんですけどね。そのレストランっていうのが、彼女の自宅から徒歩7、8分ぐらいのところで、まあ自宅に送っていきながら告白しようと思ったわけですよ。なのに、彼女は自宅へ向かわずに、何かこう遠回りしようとするんですよね。あー、こりゃダメだと思って……」
えっ、なんでそれがダメなわけ?
「だって、そうじゃないですか。それって、僕に自宅まで来られちゃ困るってことでしょ。別に、こっちは家の中にまで上がり込む気なんて全然ないんですけどね。僕に自宅へ近づかれるのすら嫌なのか、と思っちゃいましたよ~。こんなんじゃ、とてもじゃないけど告白なんて無理だと思うでしょ?」
う~ん、彼女がどういうつもりで遠回りしたのかはわからないけど、彼女の真意なんて本人しかわからないんだから、中村さんがそんなことをアレコレ詮索してもしょうがない。だったら、自宅に来られちゃ困るとかマイナス方向に解釈するのではなくて、自分にいい方に考えるべきだろう。
たとえば、彼女が遠回りしたのはもっと中村さんと一緒にいたかったから、とか。
「うわ~、すごいプラス思考ですねー。なぜ、そんなに自分に都合のいいように考えられるんだろう?羨ましいです」
ていうか、恋愛なんて結局、思い込みですから。中村さんのようにマイナス思考だと、いつまで経っても告白できないだろう。
中村さん(30歳・仮名)はいざ告白するとなると土壇場で不安がよぎり、結局は告白できないという、どうしようもないヘタレ男。こんなことでは、永久に意中の女性をゲットできないだろう。そんな中村さんのヘタレぶりは、まだまだ続く。
「僕って本人には告白できないんですけど、周りの友人や好きな女性の友人には好きだって吹聴するんですよね。我ながら姑息だと思うんですが、そうやって遠まわしに自分の思いが彼女に伝わればいいかなって」
いやあ、それはたぶん逆効果。そういう姑息な手は女性がもっとも嫌うもの。 それはやめたほうがいいかと……。でも、なぜ、そこまでして意中の女性に思いを伝えようとするのに、本人に直接告白することができないのだろうか?
「たぶん、彼女に自分のことを拒絶されることが異常に怖いんでしょうね」
いやー、その気持ちはわからないでもないけど、そこまでいっちゃうと病的な感じがするんだけど。拒絶されたらされたで、二度と会わないようにするとか、失恋の傷を癒すような方法はいくらでもあると思うのだが……。
「いやいや、そういうことは全く考えないですね。好きな女性に振られても自分としてはまだ好きなわけですから、二度と会えないなんて嫌ですもん」
えーっ、でも一回すでに振られているわけだから、もうチャンスの芽はないでしょうに。
それとも、諦めずに再チャレンジするとか?
「そんな甲斐性が僕にあるわけないじゃないですか(苦笑)。でも、いったん振られたら、まあ余程のことがない限り、二度と会わないということはないにしても、二人で一緒に食事に行ったりとか、そういうことはなくなっちゃいますよね。それが一番怖いんですよ」
まあ、もう脈がないんだから、今さら一緒に食事に出かけたりしてもしょうがないと思うのだが……。
「そんなことないですよ。告白せずに、二人の関係をハッキリさせないで曖昧なままにしておけば、彼女とつかず離れずで、ずっとそばにいられるじゃないですか。好きな女性にうっかり告白なんてして気まずくなるより、僕にとってはそっちのほうが全然いいんです」
でも、そんな膠着状態を女性がそのままにしておくわけがない。
中村さんと何の進展がないままなら、彼女は新たな男性を見つけ交際を始めるに決まっている。
「そう、それで僕の失恋は決定するんです。そこで初めて、彼女への思いを断ち切ろうと、あれこれ努力するんですけどね」
いやいや、失恋って中村さんは何もしてないじゃん!
ただ、彼女の周りを人工衛星のようにグルグル回っているだけで、直接的な行動は何もしていない。普通、そういうのは失恋とは言いません。
「そうなんですよねえ。彼女に好かれないまでも嫌われたくない、という気持ちが強すぎるんでしょうね。我ながら女々しいな、と思いますけど」
きっと相手の女性をあまりに好きになってしまったために、こうした状況に陥ってしまうのだろう。 よく言えば一途だし純情。でも、そういう中村さんのいい面を理解してくれる女性は、そうそういないだろう。 彼の孤独はまだまだ続きそうである。
今回登場する笠井さん(29歳・仮名)は、好きになった女性へ告白するのに時間がかかりすぎるのが悩みなのだそう。1年、2年は当たり前、下手をすると、告白するまでに3年もかかってしまうこともあるのだとか。
恋愛というのはある意味、タイミングとか勢いだと思うんだけど、そこまで時間をかけたせいでチャンスを逸してしまうなんてこともあるのでは……。
というよりも、なぜ告白までにそんなに時間がかかってしまうのか?
「自分的には段階を踏んでいたら、こんな風に時間がかかってしまうんですよねえ」
段階を踏んでって、どうやったらそんなに時間がかかっちゃうの?
「まず、女性と知り合って『ああ、この人感じいいな』とか思うじゃないですか」
普通は、その時点で食事に誘ったりするよね?
「えっ、そうなんですか!? そりゃ時期尚早でしょう。まだ、そんな直接的な行動には出ないですよ~」
直接的なって、そんな大げさな。いいなと思ったら、そのくらいはするもんなんじゃないの?
「いやいや、その人のことが本当に好きなのか見極める必要があるでしょう。単なるひと目惚れかもしれないし、ちょっといいなって思っただけかもしれないし」
ひと目惚れでも、ちょっといいなって思っただけでもいいと思うよ。
恋愛なんて、初めはそんなものでしょう。
「そんなことないですよー。そういう軽い感じはよくないと思いますよ。自分の本当の気持ちをちゃんと見極めないと」
で、自分の本当の気持ちを見極めるのに、どのくらいかかるんですか?
「ま、1年ぐらいはかかるかと」
えっ、なんでそんなにかかるの!? 自分の気持ちなんだから、そんなの、すぐわかるでしょうに。
「だって、彼女のいいところも悪いところもちゃんと見た上で判断しないと。いい面だけ見て惚れたような気分になっても、いざ悪い面を見たとたん嫌いになったりしちゃダメでしょ。好きになるということは、その人の長所も短所もすべて受け入れるっていうことですから」
そりゃまあ、そうなんだけどさ。そんなに堅く考えなくても……。もっと気軽に恋愛してもいいと思うんだけど。
「そういうユルい感じってダメなんですよ。恋愛はちゃんと真面目にすべきだと思いますよ。遊びじゃないんだから」
真面目に恋愛するのは結構だけど、ただ時間をかければいいというわけでもないと思うんですが。
好きなった女性へ告白するのに数年もかかってしまうという笠井さん(29歳・仮名)。
「段階を踏むことが大切」というが、いくらなんでも時間がかかりすぎ。
相手に対する自分の気持ちを確認するのに1年間もかかってしまうのはどうなのか。
「1年かけて自分の気持ちを確認した後は、今度は彼女が自分のことをどう思っているのか確認するんです」
自分の気持ちを確認するのに1年間もかかってしまうわけだから、
相手の気持ちを知るなんてもっと時間がかかっちゃうんじゃないの?
「まあ、そうですよね。最低でも1年、下手すると2年ぐらいかかっちゃいますね」
当然、そうなっちゃうよね。しかし、もうすでに知り合って1年が経過してるわけでしょ。
さらにそこから1~2年って、普通の人だったら、だれかと付き合って別れちゃうぐらいの時間の流れだよ。
「だから、そんな風に安易に付き合って、安易に別れるのを避けるために時間をかけるわけですよ」
そりゃ、そうなんだけどさ……。物事にはタイミングってもんがあると思うんだよねえ。
で、具体的には、どう確認するの?
「あー、そこは他の人と一緒じゃないですか。
食事に誘ったり、遊びに誘ったりして反応で見極めるというか……」
なるほど~。直接的にアプローチするわけだね。確かに、そこはオーソドックス。
でも、時間がかかりすぎでしょ。なにも1年かけなくても、相手の反応を見極められるんじゃないかと。
「そうですかね? でも、僕って慎重なタチなんで。念には念を入れないと……」
でも、一緒に過ごしていると、「今が告白のタイミング」みたいなことってあるわけじゃない? そういうのもスルーしちゃうの?
「う~ん、そういうタイミングみたいなのって、あくまでも自分の主観なわけじゃないですか。ただの思い込みっていうか」
だって、恋愛なんて主観的なものだし思い込みでしょ。
「いやいや、大事なのは客観的な判断ですよ。
自分の思い込みだけで、自分の都合のいい判断で行動してもダメでしょう」
だから、恋愛なんて自分の都合のいいように思い込めないとできませんて。
じゃあ、告白のタイミングがあっても本当にスルーしちゃうわけだ?
「スル―というか、自分へ好意を持ってくれているかもしれないと判断できる好材料のひとつですね。そういう告白のタイミングが複数回訪れれば、自分に好意を持ってくれているという確信が持てるかもしれないですね」
というか、そんなタイミングを複数回もスルーしちゃうのは、相手にとって見たら「自分に好意がないのかも」と思って、それこそ恋愛のチャンスを逸しちゃいそうだけどね。
「えっ、そうなんですか?」
だと思うよ。
だって、恋愛はタイミングだし勢いだし。それはともかく、次はどうするの?
「1年かけて集まった好材料と悪材料を天秤にかけて、好材料の方が多ければ告白に至るわけです」
まどろっこしいね(笑)。
じゃあ、悪材料のほうが多かったら告白しないということもあるわけ?
「そりゃそうですよ。相手にその気がないのに、告白なんてしても迷惑なだけじゃないですか」
いや、でもさ、そうなっちゃうと1年だか2年だかを無駄に過ごしちゃったということになるんじゃないかと……。
「無駄ということはないですよ。自分に対して気がないということがわかったわけですから」
いやいや、気がないというのはあくまでも笠井さんの判断というか独断なわけで、ここまで引っ張ったんだから、せめて告白までしようよ。じゃないと、中途半端に終わっちゃうというか……。踏ん切りがつかなくて、次の恋愛に行けないと思うんだよね。
というか、ちょっと恋愛観を変えたほうがいい気がする。
前回、ようやく告白までたどりついた笠井さん(29歳・仮名)。
好きなってから告白するまでに数年かかってしまうのもザラというから、尋常ではない。
そもそも、こんなに告白まで時間がかかってしまうのは、笠井さんの恋愛観に問題があるからではないだろうか。
「恋愛観ですか? 別に他の人と変わらないんじゃないですかね。普通ですよ、普通」
でも、他の人は告白するのに、そんなに時間はかからないって。
「そうでしょうか?
でも、人を好きになるというのは、そんなに安易なものじゃないでしょう」
そりゃそうだけど、時間をかければいいっていうものでもないし……。
何度も言うようだけど、恋愛ってタイミングだから。
前回も言ったけど、そんなに時間がかかっていたら、うまくいくもんもいかなくなっちゃうよ。
「うまくいかなかったら、結局それまでだったんですよ。縁がなかったっていうことですよ」
だけど、時間をかけているうちに、相手の女性が他の男性と付き合っちゃうっていうこともあるでしょ?
「残念ながら、そういう場合がほとんどですよね」
だよねえ。
「でも、2年も3年も時間がかかっちゃうと、
その間に別の男性と付き合ったとしても別れてまたフリーになっちゃうことも多いですから、
決してノーチャンスというわけじゃないんですよ(笑)」
いやいや、そんなの冗談にしても笑えないって。他の男と付き合う前に告白しちゃおうよ~。
「僕、そういう外的な要因で告白するのは嫌なんですよね。
あくまでも自分のタイミングで告白したいというか……」
その自分のタイミングで告白して、今まで成功した確率はどれくらいなの?
「いや、0%ですよ。うまくいったことなんて全然ないですから」
それでも、今のやり方を改める気はない?
「ないですね。これが自分のやり方ですし」
初志を貫徹するのは立派だけど、相手の女性にそれがわかってもらえないとねえ……。
自分の意思を貫き通すというよりも、単に「自己都合」っていう感じがするんだけど。
「相手の女性は関係ないですよ。これは自分の問題ですから」
いやいや、恋愛は2人の問題ですよ。
笠井さんの恋愛がうまくいかないのは、タイミングの問題もさることながら、
そういう唯我独尊というか、相手の女性を顧みない閉鎖的な恋愛観も関係しているんじゃないかな。
自分の世界を守っているだけじゃ女性は寄りつかないし、
自分のことだけじゃなく相手の女性を思いやることも恋愛には必要だと思うよ。