彩乃---最近の若いサラリーマンって、すんごいスーツが細身だって思わない?
真央---最近はそれが当たり前じゃないですか?ダボッとしたスーツ着てる若い人、あまり見かけなくなりましたよ。
彩乃---そうじゃなくて、身体にジャストフィットするぐらいならいいんだけど、すごくピタピタなスーツの人よ。ビジネスマンなのに、モード系な感じの。
さくら---うちの社にも、そういうオシャレおたくな人いますよね。
彩乃---Y男でしょ。あれはちょっとやりすぎよね。ノーネクタイのときはシャツのボタン3つぐらい開けて胸はだけてたし…。
Y男---ノーネクタイって…。ちゃんとイタリア語で“センツァクラバッタ”って言ってよ!
真央---ノーネクタイでいいよ…。
彩乃---しかしY男、今日もオシャレしてるね。
Y男---今日は、ナポリ仕立てのクラシコイタリア的なスーツにしてみました。んでもって、腕時計はパネライで靴はベルルッティかな。
真央---男もののブランド、あんまり興味ないなー。
彩乃---何となく高級そうなのはわかるけど、そういうのってトータルいくらぐらいになるの?
Y男---全部で100万円近くは、いってるんじゃないですかね。
さくら---Y男さんって私と同期なわけだから、そんなに給料多くないですよね?
Y男---給料とボーナスのかなりの部分、洋服に費やしてるからね。オレの場合、ファッションのエンゲル係数が相当高いよ。
さくら---そんなエラそうに言うことでもないと思うんですけど。
彩乃---まあ、一般的に女性の方が男性よりもオシャレが大好きだし、ブランドも大好きなんだけど、女性がオシャレするのって、男性にアピールするというよりは同じ女性を意識してるところがあるじゃない?もちろん男性にモテたいというのはあるけど、オシャレしてる部分を同性にわかって欲しかったり、一目置かれたいという感じだよね。その辺、男性はどうなの?
Y男---まあ、オレの場合は自分がファッションへの関心が高いというのもあるけど、 やっぱりオシャレな方が女性にもモテるんじゃないですかね?
さくら---そうなのかなあ?ちなみにY男さんは彼女いるんですか?
Y男---いや、それがいないんだよねえ。かわいいコがセンスのない彼氏とくっついてるのを見ると、理解できないっていうか。絶対、オレのほうがオシャレなのに。
彩乃---コラコラ、すべての価値基準をファッションで測るんじゃないの。結局、Y男はモテたいためにオシャレしてるけど、モテてないわけだ。女性目線で見れば、ファッションにお金使いすぎて、彼女にお金使ってくれなさそうだし。
さくら---オシャレのことばかり考えていて、仕事ができなさそうな気がします。
真央---ブランドのウンチクとか語られて、話がむずかしそうだし、男性はむしろ女の子のオシャレをほめてあげるほうがいいんじゃないですか?
Y男---ていうと、アレですか。オシャレな男はモテないと?
彩乃---オシャレだからという理由だけで男性に惚れたりしないよ。男性のファッションであたしが気にするのは、ヘンじゃないかどうかということぐらいだよ。
真央---あたしが男性のファッションでいちばん気になるのは、ズボンの丈が妙に短い人。
さくら---それ、私もそれ気になりますね。
彩乃---あ、Y男も短いね。くるぶし見えてる。
Y男---短いって……。オレのはあえて、そうしてるんですよ。単にズボンの丈が合ってないわけじゃないんですよ!
彩乃---イタリア人を気取ったって日本人なんだから、体型的に無理があるんじゃない? ファッションに限らず、無理してるのが見えるのってやっぱカッコ良くないと思うよ。
さくら---わたしは男の人のアクセサリーが気になります。プライベートだったらいいですけど、最近はビジネス中なのにリングとかブレスとか着けている人が多いですよね。仕事に集中していないみたいで、好感度が低いです。
Y男---えっ、なに言ってるんですか。男のアクセサリーは、なかなか個性をだしにくいスーツスタイルには重要なスパイスなんですよ。さりげない小物使いで、他と差をつけるというか……。
彩乃---だから、それで差をつける暇があったら、仕事で差をつけなよ。それにY男の場合、全然さりげなくないよ。腕時計は異様にデカいし、リングだってゴツすぎ。
真央---それと、計算したかのようにシャツのボタンを3つ開けて、はだけた胸元にペンダントトップが輝いているのもちょっとやりすぎな気が…。
Y男---みなさん、オレが一生懸命オシャレしてる部分をことごとく否定するわけっすね~(泣)。
さくら---あっ、でもY男さんのファッションにも好感を持てるところもありますよ。
Y男---えっ、なになに?
さくら---いつも靴がキレイなところ。洋服に気を使っても靴が汚れている人って、けっこういますよね。その点、Y男さんの靴はいつもピカピカですもんね。
Y男---でしょう。なにしろ毎週日曜日は1日中、手持ちのすべての靴を磨いてるからね。とくにベルルッティみたいな高級靴はさ、そうやって大事にケアしないとすぐに痛んじゃうんだよね。
真央---すごく得意げね……。
彩乃---なんで、そこでもっとさり気なくできないかな。靴の手入れに「いかにも手間ひまかけてます」的なアピールが余計だよ。ブランド自慢やウンチクを語ろうとしてるところも。
さくら---そこまで靴の手入れに時間をかけてる暇があったら、本の1冊でも読んで欲しいです。
彩乃---だいたい、自分の彼氏がそうだったら、日曜日にどこにも出かけられないよ。
Y男---おかしいなー。じゃあ、オレがいつもシャツとネクタイの色をコーディネートしてるのは、どう思います?
彩乃---いや、いいと思うよ。ただ、それがY男の人間的な魅力に直結するというわけじゃないんだよ。女性は男性のファッションに過剰なものは求めてないわけ。要は女性にとって重要なポイントは、その人のファッションがヘンじゃないかどうかということ なんだけど、結局ヘンという意味ではダサいのもオシャレに懲りすぎるのも、女性にとっては同じことなんだよね。