あなたは『源氏物語』の光源氏と頭中将の関係をご存じですか。あるいは薫と匂宮のことは？　いずれも男同士の親友で、そして同じ女性とつきあっていました。光源氏は、頭中将の妻の一人として娘まで生んだ夕顔と、薄々それと感づきながらも関係を持ち続けます。匂宮にいたっては、薫の愛人の浮舟を、薫を装って寝取ってしまいます。二人の女はその後、いずれも不幸な目にあいます。夕顔は光源氏とデート中に変死。浮舟は、匂宮との関係が薫にばれて、どちらの男も選べぬまま、思い悩んで自殺を図ります。
　では男達の関係はどうなったでしょう。これが両者、見事なほど変化なし、なのです。光源氏は、その後二十年近くたって、頭中将と夕顔の娘(玉鬘)を引き取って実の娘と公表していたのですが、実はそれが頭中将の娘であることを告白します。そのとき頭中将は光源氏と夕顔との間に関係があったことを知るのですが、光源氏に感謝こそすれ、非難はしません。光源氏と娘の玉鬘との間に何かあったのでは？　娘に手を出したのでは？という心配は彼の胸をよぎりますが、夕顔と光源氏の関係については何も思いはしないのです。それは夕顔が頭中将の正妻でなかったという身分上の問題も大きいのですが、彼らはむしろ一人の女を共有することでつながりを深くしているようでさえあります
　薫と匂宮の場合は、匂宮のやり方がやり方だけに、浮舟はとても苦しみました。
「匂宮と私の関係を知った薫が、匂宮を痛めつけるのではないか」などと物騒なことすら心配して自殺の道を選んだのですが、これまた男達の間には、あっけないほど何も起こらない。さすがに薫は「いい女だったので、いずれあなたに差し上げようと思っていたんですよ」などと、負け惜しみとも皮肉ともつかぬ一言を匂宮に浴びせるものの、二人は以後も友達づきあいを続けます。
　男同士の友情が、皆こんなものだとは思いません。『源氏』は多少、同性愛的な色合いが強いかもしれません。でも、あなたが思うほど、男達は傷つかないのではないでしょうか。たとえ傷ついたとしても、あなたの気持ちが抑えられないのなら、好きな男のほうを選んだら良いと思います。
　ただし『源氏』の女がそうであったように、あなたと彼氏の友達がつきあうことで、一番傷つくのは、結局は、彼氏でもその友達でもなくて、あなた自身だという覚悟はしておいたほうが良いでしょう。何より、その友達に、あなたとつきあう意志があるのか。その友達に「男友達の彼女」とつきあうほどの勇気と、あなたへの愛があるのか。確認する必要があります。確認して答がオッケーならつきあえばいいし、ノーならその話は二人だけの秘密として葬ればいい。いずれにしても、今の彼氏に対するあなたの気持ちは冷めてきているのでしょう？ それともマンネリになっていて、新しい刺激が欲しいだけでしょうか？そのへんのご自分の気持ちも自問してみてくださいね。